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東ッタゆらぎ

先日あったことを記します

『AVから学ぶ』第7話 弁当

 

 

「お、お昼一緒にどうですか!」

 彼女の開けた口からは俺が予想もしていない言葉が発せられた。

 それに対し、俺は数秒硬直し、たじろいでしまったが、ナチュラルに「はい」「いいよ」と(正確にはもう覚えていない)が声高に返事してしまっていた。

 

 例のお昼は学校の北棟と南棟の間に位置する中庭で行うことになり、そこに向かった。

 俺と彼女はともに教室のある南棟三階から階段をおりた。

    緊張感に襲われる。

 俺が先に階段を降りると後ろから彼女の足音が聞こえてくる。

 彼女はどうゆう思いで俺を誘ったのだろうか。

 いろいろな思考がめぐりながらも、階段を一段一段、丁寧に降りていき、二人の足音を確かにうずまき管にこだまさせる。

 

 そんな具合に歩いていると目的地である中庭についた。中庭にはベンチが二つあり、その中央には夏だと実感させる緑色の桜。

 二人ならんで静かにベンチに座る。

 静寂が訪れると思いきや彼女の声が打ち破った。

「それじゃあ、食べましょうか」

「お、おう」

彼女はカバンから弁当である四角形の入れ物を出した。

「今日私、お弁当つくりすぎちゃって……よかったらこれどうぞ」

「ありがとう」

といって彼女から弁当を受け取り、中を開けて見るとそれはもう世界中の男子があこがれる『女の子の手作り』料理であった。

「すげぇ‥‥‥どれもうまそう‥」

知らぬうちに感想が口から洩れていた。

それもそうと断定するくらいにその弁当は素晴らしい配置であり並びに絶妙な配分であった。

「いつも自分で作っているのか」

「はい、そうですよ。どうぞ召し上がってください」

 お箸をうけとりさっそく弁当をいただく。

 ―――美味い! 

 俺は目を見開いた。

 こんなにうまい弁当が存在するのか! 俺の母親はこんなに美味い弁当は作らない。いつも冷凍食品のオンパレードだ。まあ、バリエーションはあるけれど。

 

「美味いな! こんなに美味い弁当食ったのは久方ぶりだよ。毎日作ってほしいくらいだ!」

「あ、ありがとうございます。気に入っていただいて光栄です」

 彼女は万弁の笑みで俺にそう答える。

 本当に可愛らしく、この子の彼氏は本当にうらやましい限りだ。

 だからどうしてでもこの子を手に入れて見せる。

   なぜか自然と元気がでた。

 その所以も好きな子の手作り弁当を食べたからだ。

「あ、あの、もしよかったらなんですが、あ、明日からも作りましょうか‥‥‥」

彼女は顔を真っ赤に染めて言った。

願ってもいないことだった。

けれど彼女には彼氏がいるのでは?

そう、先ほどから校舎の隅から中庭を鋭い視線で覗く男とか・・・・・。

 

川内直哉は万能である。

 

あの男の視線には三階の教室にいる時から気付いていた。

おそらく彼女の彼氏であろう。

けれど、ただ彼は視線をぶつけるばかりで何も干渉してこなかった。

俺ならば間違えなく、我ら二人の行為に殺気立って憤りを覚えるに違いない。

だが、彼は何も行動を起こさなかった。

途中に割って入る勇気がない無能なのか‥‥‥。

本当にそうなのか‥‥‥彼女のような絶世の美少女をものにするくらいの彼氏だぞ?

ーーーけれどこれは俺の考えだ。

まだ彼を無能だと判断してはならないと思う。

人はそれぞれパーソナリティを持っているから俺の意見と彼の意見が同義なわけがない。

よって見定める必要がある。

そう俺とアイツでどちらが相応しいのか。

彼女を幸せにするのはどちらが適しているのか。

 

だから彼女からの毎日弁当供給制度はあの男と決着をつけてからにしよう。

彼女が俺に勇気を出して言った言葉にはふさわしい返事ではないけれど、それでも伝えたかった。

「それは大事な勝負を終えてからにしよう」

彼女は顔に?マークを浮かべたが、別に説明する意味もないので俺は微笑んで再度口に出す。

「安心しろ、君は俺が貰う」

 もうその頃には直哉の対人恐怖症のような女性恐怖症は微塵も感じさせず、子供の頃のような愛あふれた明るい顔になっていた。

 彼女は顔を赤色リトマス試験紙のように染め上げて顔をしかめた。

 

お昼のチャイムがなり、その別れ際。

「そういえば、名前はなんていうんですか」

「直哉、川内直哉」

「せんだい……なおや‥‥‥」

   彼女は直哉の名前を忘れないようにするためか、その場で反芻する。

     ともかくこの機会に彼女の名前を聞いておこう。

「君は、君の名は」

「私は神通黄泉子。黄泉子っていいます」

「黄泉子‥‥‥いい名前だ」

    驚いた。

 彼女のような美貌の持ち主はどんな名前かと。何度も考えてはいたが、やはり予想していた通りに普通の人間とはかけ離れた名前であった。

 心から彼女に似合っている名前だと思う。

 名は神通黄泉子。

 俺が初めて愛を注ぐ名前である。

 

そうして、俺は彼女と別れの挨拶をしてから教室に戻った。

  

とても驚いた。というか度肝を抜かれた。

 

教室の前には男が立っていた。

あの校舎の隅から中庭を覗いていた男だ。

男はただの無能ではないらしく闘志を抱いて、さも険悪で憤怒にみちた両眼を俺に睨みつける。

 その雰囲気に半ば圧倒されかけたが、ここで倒れてしまっては勝負に興が冷めてしまう。

俺は睨んでいる眼を睨み返して、少しばかりニヒルに笑ってみせる。

 

ここからが直哉の正念場だ。

 

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追記

更新がすごい遅れたすいません

誤字あればいってください

AV要素がまるでない!

登場人物

川内直哉(せんだいなおや)

神通黄泉子(じんつうよみこ)

あと彼氏(名前は次回発表)

苗字は全て艦これを参考

次回 八話 対峙