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ゆらゆらゆらぎ

先日あったことを記します

『AVから学ぶ』最終話 青春

これぞ、戦い。

男と男の意志を交えた争い。

<戦争>とでも比喩してみたいがここは<青春>と暗喩しておこう。

 

スーッと何かが風を切る音。

那珂の拳が俺におしよせてくる。

それを俺は磨かれ学習しつくされた体で簡単に容易に軽くことごとく避けた。

 

那珂ははぁはぁと息を乱していた。

それでも次のモーションにとりかかる。

前方にでての回し蹴り、勢いは序盤に比べて、大分おちている。

 

それを俺は避わす。

 

―――続けて、

 

那珂が殴る。

 

俺は避わす。

 

そのやり取りをもう数えきれないほど続けてきた。

外野はそれでも静まりかえらず、ただ俺たちの戦いに野次をとばし両者を見守っている。

 

……。

 

もう勝負は見えているのに那珂は憤りを覚えた表情、ずっと絶やさず今でも俺に敵意をむけて「いまにも殺してやる」というくらいの死に物狂いの顔で俺を睨んでいる。

 

彼はきっとあきらめない。

 

けれど……学園最強の人間が一介の先輩男子生徒と戦っても結果なんて自明の理、証明なんて必要ないし、検証も実験も必要としない、森羅万象のことわり。

誰でもわかる、チンパンジーでもわかる。

強者>弱者

逃げる、諦める、喪失するに決まっている。

 

されど、この意に反して尚も那珂 尚は俺に向かってくる。

 

俺はまたかわす。それでも那珂はあきらめない。

 

これはただの足搔きなどではないのだろう。

 

もちろん、反撃するチャンスなんていくらでもある。現に今だって。

 

だが、反撃しようと脳から命令しても拳が出ずに足が思うように動かない。

足がすくむ‥‥‥。

せいぜい、今できることは相手の攻撃を避わすぐらいだ。

なぜ、動かない?

 

 

那珂の意思に動揺しているのか?

 

 

なんで、あそこまで、必死に、戦おうとするのか。

知りたい。どうしても。AVでは知らないなにかを。

俺は必死にーーー

「なんで、そこまでして黄泉子ちゃんとの関係を守る!」

 

ハァハァと息耐え耐えに那珂は応えた。

 

「俺は黄泉子ともう何年も付き合っていてな、その何年かの間にお前みたいに割り込んできた奴も何人かいた。俺は本当に黄泉子が大好きだから、どんな奴が相手でも諦めたり逃げ出したりせずこうやってやりやった!」

 

語気を荒げならがら拳を突き上げてきた。それを俺は逃げずにただその拳の重みを直に受けた。勢いは勝負の序盤のスピードを凌駕していた。

 

「だからよぅ、はぁ、今回だって黄泉子をお前なんかに渡したりしないんだよ。俺は誰が相手だろうと例え学園一の頭脳明晰、運動神経抜群、眉目秀麗でオマケに優等生な人間が相手であっても、逃げやしねぇ!  勝負はどっちが勝つかなんて最後まで誰にも解りやしねえ、最強な人間が相手だったら勝負の最後の最後まで好機を待って叩いてやる。俺の意思は曲がらず、いつだって真っ直ぐだ! それを黄泉子が前に褒めてくれたからよぅ。ようは黄泉子が大好きだから俺は頑張れるんだ!」

 

 大好きだなんて、根拠のない虚言じみたことが真実に聞こえる。疑いなんてない晴れやかに

‥‥‥。

俺の負け。

人間として那珂は俺よりも誰よりも誇り高く素晴らしい人間だった。

真っ直ぐな人間で行動力のある、いつも支えてくれるようなそんな安心感がある。

倫理や論理を飛び越えて、守ってくれる。

真っ直ぐな目。

逃げるとか投げ出すとか諦めを知らないぐらい純真無垢で清廉潔白な愛溢れている人間。

 

こんな人間が一番、神通 黄泉子の側に適切だと思ってしまった。

 

力の差は歴然として俺の方が上であるのに、

人間として那珂 尚は俺の遥か先に歩いている。

 

川内 直哉<那珂 尚

 

自明の理とはこのこと。勝負は始まる前からついていたとは‥‥‥なんと自虐的なことだったんだろう。

 

戦う前から勝つくらいの意思を持っていた俺でも、戦う前から負けていただなんて。

 

人生初めての敗北。

 

俺の上に人は立たず。横にも並ばず。下は見ず。

そんな人生。

無機質な味気ない。ゴミのような今まで。

 

けれど、なぜかそんな冷めた人間の目頭が熱い‥‥‥俺は人のなんたるかに触れたような気がした。

ーーーいや、この那珂尚という男に俺の冷めた心を温めて貰ったからだろうか。

 

これは......きっと

 

 

心の温かさ。

 

 

今まで触れることのなかった境地。

 

俺は目から涙を流した。

 

 

 

「おい、てめぇ、何泣いてやがる」

那珂が俺にそう言った。

「この勝負、俺の負けだ。黄泉子ちゃんの側には君が適任だ」

俺は涙を拭いて笑顔でそう言った。

 

「へっ、そんなことなら最初から挑んでくんなよ。それじゃあな」

 

彼はそう言って去っていった。

その後ろ姿に俺は再度、泣き出しそうになる。

 

「‥‥‥ありがとうございます」

 

俺はそう小さく心の中で呟いて、家に帰った。

 

 

 

机の上には散りばったAVが置いてあった。

 

たくさん積まれていた中から1つを取り出してこう微笑んだ。

 

「本当に今までありがとう、無かったら俺はここまで楽しい思いを出来なかった。この胸の高鳴り、高揚感、全て君たちのおかげだ。もう決心はついた。これからもたくさんの人の役にたってくれ」

 

俺はそう言ってAVをレンタル屋に全て返した。

 

 もう俺には必要ない。もし、俺のように死にそうになっている人がAVを見つけて貸出中だったら困るからな。

 

夜に浮かぶ星空を眺めて俺はレンタル屋を後にした。

 

これから先、世界中にいる誰かがAVというメディアに助けられて欲しい。そう星空に願った。

困った人を助けてくれる正義のヒーロー。

 

故にそれがAV。

 

 

 

俺が愛したAV。

 

 

 

 

ありがとう、今まで、本当に。

 

近似的な昔の俺(少年)が姿を現わす。

そいつにおれは微笑む。

    俺はちゃんと更生したよ。

ーーーそうだね。よく頑張ったね。

    それじゃあな。

ーーー本当に、それでいいの‥‥‥せっかく温かさを知ったのに。

   これはもうとっくの昔から決めてたことなんだ。

ーーーそうかい‥‥‥それじゃあ最後は湿っぽいの抜きで頼むよ。

俺はそれじゃあな。と少年に手を振った。少年もそれに返して笑顔で手を振った。

近似的な昔の俺は消えた。

 

 

そうして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングで自殺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

やっとこの『AVから学ぶ』が終わりました。

感動してくれた人はいるかなぁ???!!!

 

まあ簡単にこのはなしこ梗概を申しますとAVに触れて生きる時間が長くなって至宝の喜びを得たみたいな感じの話です。

 

まだ僕のブログで完結してない小説はありますので

、これからはそれをやって行きたいとおもいます。

それではさようなら>_<