東ッタゆらぎ

先日あったことを記します

『SMくらぶっ!』 プロローグ

ーーー世界は私の面白いように出来ているーー


   ーーーいいや、そんなことはないーーー
 
 とあるホテルの一室。
 その一室は「0号室」と呼ばれており、最寄りに他の部屋はない。
 まあ、ようするに、このホテルのVIPルームであるところだ。 
 VIPルームであるのだから、中をどうしても覗きたくなる。

 しかし、覗いた先には、たくさんの死体の山であった。
 
 部屋の中にあった豪奢と表現される全ての物は儚くもその価値を剥奪されたかのように、血を浴びて、血に汚れて、誰もが求めないようなものに変貌してしまった。

 そして、そんなものは飾りに過ぎず、誰もが注目するのは散々と暫然と聳え立つ死体の山。

 積み重ねられた死体は皆が皆そろって、白目をむいて、口を開けて、清々しい表情をしている。
 そう、言うなれば嬉々として、死んでいるようだ。
 そしてその数である。
 男女構わず、無作為に20人ほど積まれている。
 間違えなく一つの部屋にいる人数ではない。
 せっかくのVIPルームが台無しである。

 しかし、その部屋はもう部屋と認識することが出来ないほど血に汚れていた。

 そして、こんなにも酷くおぞましい光景に似合わない、酷く悲しい声が聞こえた。


「ああ、どうして、こんなにも簡単に壊れてしまうの」

 その声には途轍もないくらいに、憂いを帯びていて、今にも泣き出しそうなか細い声である。
 どこから聞こえてきたのだろう。
 考える必要もなかった。
 部屋の中である。
 そして、再び覗き込んだ。

 私たちは揃いも揃って自身の目を疑った。

 そう、死体の山の上で俯いて座っている少女に視点を合わせなかったからである。

 赤いドレスを着ていた。血のように赤い。
 そしてやはり、そのドレスは彼女を表すにはいささか不十分で飾りであり、注目すべきところは、魅了されることを義務とする整った顔であった。
 おまけに瞳は透明な赤色をしていて、赤褐色の長い髪と彼女を少女と忘れさせない細い手足。
 また、見落としてはいけないのが、彼女の所有物であろう、いやしくも死体の山にたてかけられた、彼女と同じくらいの大きな銀色の槍である。

 それらの光景はどこまでも浮世絵のようなものであり、絵に描いたようであり、夢のような夢物語で、誰もが想像なしえないくらいに荒唐無稽で、酷くおぞましかった。
 しかし、おぞましいと言ってもおぞましいだけだった。
 
 そう実のところ、彼女は〈美しい〉のだ。
 美しいだけに美しかった。

 ただーーーそれだけだった。