テテフイテテ

おれはひとりの修羅なのだ

マツキの言葉


・はじめに 
これは小学生の頃、住んでいたマンションの清掃員マツキが発した(俺が覚えている限りの)言葉。それをこれから紹介していく。

 

 

「1円2円でもお金は大切にせにゃならない」


例えば電車で100円の切符を買うとき、手持ちが98円ならばその切符は買えない。当たり前のことであるが、たった2円足りないだけで切符は買えず、目的地に向かうことができないのだ。だからどんなに少ないお金でも大切にしないといけない。大切にした少ないお金が自分を救うのだから。
というようにマツキは俺達に諭した。少ない金でも大切にしていればいつかは切符が買えるくらいになるという意味合いも込めて。なぜマツキはお金の大切さを電車の切符で例えたのかわからないが、このマツキの言う"切符"とは電車の切符に限らない何か別のことも表している気がすると子供の時の俺は直感した。気がする、だけだ。なんせその時の俺は7歳だったから。

 

 

 

「アイツはだめだ!管理職は妬ましい!昼間ずうっとクーラーの効いた涼しい部屋にいるのに昼間ずうっと暑い中掃除をしているアタシより給料がいい!」

これはマツキが子供の俺達に溢した管理人への愚痴だ。小2くらいの俺達はその言葉に上手く反応出来なかった。大の大人が俺達子供にそんな愚痴を言うのは情けないかもしれないけど、毎日懸命に掃除をしていたし、マツキの部屋には扇風機しか置いてないのだ。愚痴を言うのも無理もない。俺達はマツキの癇癪のこもった声音を子供ながらに噛みしめた。

 

 

 

「13時まで掃除するから出てくれるか」

これについては指したる意味があるわけでもなく、ただ仕事上必要な機械的な言葉。けれど幾度となく聞いた言葉のせいか、思い起こせば、幻燈のようにうっすらと俺の脳裏に映し出される。

 

 

・さいごに
もう10年近く前のことであるから、思い起こして書こうと試みるもたった3つしか出てこなかった。もちろんこの3つは一語一句正確に書かれているものではない。なんとなくそれらしいこと言ってたな〜的な感じで書いている。あとマツキを代名詞で"彼女"と書くことを嫌ったことは分かっただろうか。それはマツキを彼女と言うにはあまりにも年を取り過ぎていたし、マツキに対して彼女と言い換えるのは凄く失礼な気がしたからだ。マツキはマツキだ。その真意はわからないけど、そうするべきであった。それにしても普通は忘れる10年前の人を何故覚えていたのだろうか? それはきっとマツキが常日頃、サングラスを装備していたからだ。あのマツキがいた数年間、俺達はマツキの両眼を見たことがない。